ISBN:4167110083 文庫 東野 圭吾 文藝春秋 2003/08 ¥490

この正月休みでせっせと読んで、読み終わりました。

探偵ガリレオと予知夢。

基本的に、面白い。そして、読みやすい。

短編5話と言うことで、非常に読みやすいです。
途中で読むのを止めるのも止めやすいし、前後関係の把握も、短いので、容易です。

さて、感想としては、どうして、この小説があんなドラマになったんだろう・・・と。
ドラマのほうが、ストーリーが良く練られていて面白かったです。

例えば、ドラマ6章の「夢想る」の坂木を呼び出す方法が、ただの手紙と言うよりは、水に浮かび上がった文字と言う方が、どう考えても、「探偵ガリレオ」っぽいです。

他に、ドラマ7章の「予知る」の深キョンの怖さ。
小説では、動機が菅原(妻)の浮気という良くあるストーリーなのですが、ドラマは「金」。
金の為に、全く関係ない女性を軽く殺している怖さが良かったです。
ただ、ドラマの方は、あまりの怖さに、動機がイマイチ理解できなかったので、もう少し、人間関係を丁寧に描いて欲しかったですね。その点では、小説の動機のほうが良かったかもしれません。

また、ドラマ5章の「絞殺る」のラストシーン。
小説では、自殺に対して、保険金が支払われるのは1年後からという事実に対して、小説版では、「ルールでしかない」と言っていますが、実際は、そんなことはないと私は考えています。
確かに、1年という線引きは、ルールでしかないですが、保険加入後すぐに自殺をし、莫大な金が手に入るのでは、金のための自殺者が急増しかねません。

等など、トリックは殆ど同じでも、基本的にドラマの方がストーリーが練りこまれていて良かったと思います。

後発の方が、色々な人の目に触れ、良く練ることが出来るのでしょうから、単純に後発のドラマのほうが良くなるのは当たり前ですが。

さて、一方で、小説の方が良いなと思ったものもいくつか。

例えば、ドラマ最終章「爆ぜる」は、動機は小説に順ずるものがあるものの、トリック自身も、ドラマでは未知の物質を使って行い、最後は意味不明な爆弾処理というイマイチなもの。一方、小説では、ナトリウムという概知のものを使い、また、ストーリーも帝都大学を舞台とし、コンパクトに纏め上げています。
ドラマは、気合を入れすぎて、設定を大げさにしすぎてしまった感があります。

ただ、「転写る」と合わせて2話完結にし、最終話としたところは、良かったと思います。
転写るは、最終回として超常現象も、ストーリーも内容も良かったです。

また、「絞殺る」では、奥さんが小説での2人分の役をしているため、ストーリーが軽くなってしまっています。ストーリーに対する深みが小説版のほうがあります。
ただ、全体的に、小説は、自殺を肯定してしまっている感があるので、それを払拭するためには、こういう演出にする必要があったのだろうとは思います。

と言った感じで、「容疑者Xの献身」も読んでみます。
1500円以上するのは高いな・・・

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